館報まっさき 第347号(令和5年11月20日発行)

健康長寿のための筋肉の鍛え方その1

日本老年学会理事長で医学博士の荒井秀典先生は、健康長寿のための正しい筋肉の鍛え方について、つぎのように話しています。
年をとると、①筋肉量の減少や脂肪量の増加、骨密度の低下、②活動量の低下や食事摂取量の低下、③ホルモンの変化やサイトカインの増加、④神経細胞の減少などの身体の変化が起こります。
こうした変化のうち、筋肉の衰えを「サルコペニア」、運動機能の低下を「ロコモ」(ロコモティブ・シンドローム)、心身の虚弱状態を「フレイル」と呼びます。
そのうち、特に体の衰弱を「身体的フレイル」、脳の衰え(認知機能の低下、うつ)を「心理・精神的フレイル」、社会的孤立やコロナ禍による閉じこもりなどを「社会的フレイル」と言います。

ロコモやフレイルは、かつては加齢による不可逆的な生理現象と考えられていましたが、二十一世紀になり、運動や栄養によって改善することが分かってきました。
サルコペニアへのメカニズム
筋肉は非常に細い筋繊維(筋細胞)からできています。筋細胞はタンパク質の合成と分解を繰り返しながら恒常性を維持しています。合成量と分解量が同じなら筋肉の機能は変化しませんがタンパク質の合成に必要なビタミンDやアミノ酸を食事で摂取していないと、筋肉は衰えます。
また、年をとるとテストステロン(男性ホルモン)が減少するので、筋肉は衰えます。内臓脂肪が多い時も炎症性サイトカインが発生し、タンパク質の分解を促進するので、筋肉が衰えます。
ただし運動すれば、内臓脂肪が減る上に、タンパク質の合成を促進する分子が分泌されるので、筋肉は増強します。
タンパク質やビタミンDと筋力・筋肉量の関係
高齢者はタンパク質を多く摂取しないと、筋肉が衰え、老化の進行が早まることがわかっています。また、高齢者の八割がビタミンD不足です。ビタミンD不足は筋力・筋肉量だけでなくカルシュウムの吸収も低下させるので、サルコペニアや骨粗しょう症を招きます。「高齢者は動かないので、少食でいい」という考えは間違えです。年をとったら食事はしっかりとりましょう。