R4館報まっさき 6月号

R4 館報6月
<よい眠りとはその2>
前号に続き、日本睡眠医学協会理事長大谷憲先生が話されていることを紹介します。
午後10時から午前2時に最も再生が進む
人間は、人生の3分の1を眠って過ごす。なぜ3分の1も睡眠をとらなければならないのか。それは、体、特に脳の細胞の再生に大きく関わっているからである。
人間の活動の中でも特に中心的な役割を果たす脳は、激しくエネルギーを消耗する。また、脳細胞は目を覚ましている時は勿論、眠っている時にも活動している。
その脳細胞が再生されるためには、脳はゆっくり休息をとらなければならない。そのため、長い睡眠時間が必要になるのである。
脳下垂体から分泌されるホルモンの一種に成長ホルモンというのがある。これは、人間の成長や細胞の再生を促す大切な役割を担っている。
主に、睡眠中に分泌され、午後10時から午前2時にかけて最も活発に分泌されることがわかっている。就寝時間が遅いと、十分に成長ホルモンの恩恵が得られないことになる。
再生の鍵を握るのは成長ホルモン
成長ホルモンというと「子どもの成長に必要なもの」と思ってしまいがちであるが、そんなことはない。大人にとっても非常に重要な役割を担っている。
今まで、脳細胞は一度完成すると、細胞は入れ替わらないと考えられてきたが、それが大人になっても、脳細胞が成長していることがわかってきた。つまり、大人の脳が成長していくためにも、成長ホルモンが必要なのである。
 さらに、成長ホルモンは、肝臓に働きかけることにより軟骨細胞を増殖させるソフトメジンCという物質を分泌させ、骨の成長を促すとともにタンパク質の合成を促し、心臓などさまざまな臓器や機関の発育にも関わっている。また、それだけでなく、脳に働きかけ、脂肪の分解促進、タンパク質の合成促進、糖質、骨、水分、ミネラルなどの代謝を調節し、体が常に一定の状態に保たれるようにバランスをとる役目も果たしている。

 このように、成長ホルモンが、基本的な体の代謝の調整を行い、成長を促し、さらには、細胞の再生も行っているのである。
深い眠りが眠りの質を高める
睡眠時間や生活のリズムが乱れると、体に影響が出てくる。まず、現れるのは、免疫機能の低下である。
 寝ていれば治るということは、動物を見ていてもわかる。怪我をした動物は、薬などを用いなくとも、じっとしたまま眠っている。眠ることによって免疫力を高め、回復を待っているのである。
 私たちも風邪の引き始めに一晩ゆっくり眠ることで、翌日にはケロリと治ってしまっている経験をしている。これも、この免疫力のおかげなのである。
体のメンテナンスを最大限に行うためにも、眠りの質を高めたいものである。
 ところで、眠りの質とは何か。単純に睡眠時間をとれば質が上がるというものではない。睡眠の質は、眠りにつく時間とともに「いかに深く眠ることができているか」に関わっている。
レム睡眠とノンレム睡眠
この深い眠りを考えるうえで重要な2種類の睡眠がある。それがレム睡眠とノンレム睡眠である。この2種類の睡眠が、深い眠りとなって脳と体の休息をもたらす。
ちなみに、8時間寝ていても、体の休息分の睡眠は1時間程度といわれている。つまり、ほとんどは脳の休息のためなのである。
レム睡眠では、主に、体が休息をとる。眠りは浅く、脳は起きているが体の筋肉は緩んだ状態である。眼球が動いたり、手足がぴくぴくと動くことはあるが、筋肉はゆるんでいるため、体に力は入っていない。
ノンレム睡眠では、脳が休息をとるため、脳の温度が下がる。このときに、成長
ホルモンが分泌される。新陳代謝が進み、細胞の再生作業も行われるのである。
いつ、最も深い眠りになるか
このレム睡眠とノンレム睡眠は90分でワンセットである。レム睡眠は、1回目は5分、2回目は10分・・・と次第に長くなっていく。
一方ノンレム睡眠は、最初のノンレム睡眠が最も深い眠りである。成長ホルモンの分泌、細胞の再生、新陳代謝などが一番活発に行われるのは、この最初のノンレム睡眠の時である。
つまり、最初の眠りの質を高めることが重要だということがわかる。いくら「わたしはきちんと眠っている」と思っていても、深いノンレム睡眠がとれていなければ、質のよい眠りとは言えない。
従って、寝つきをよくして、1セット目のノンレム睡眠をしっかりとるように心がけることが大切である。
きちんとした睡眠をとらなければ、成長ホルモンの分泌量も減り、再生も進まなくなる。細胞が損傷したり、再生されずに使い古されていき、寿命になってしまうということが起こるのである。
短時間睡眠では仕事ができない
 このところ、忙しいビジネスパーソンの間では、短時間で効率よく睡眠をとるブームがあるようである。睡眠時間を削っても決して作業効率は上がらない。
 睡眠は脳の休息とともに、もう一つの大きな仕事をしているからだ。
それは、「記憶の仕事」だ。
 人間は、日中さまざまな情報と接している。その情報の中には、大切なものも、忘れてもいいものもある。脳は瞬時にその判断を下せない。コンピュータのメモリと同じく、情報をただ蓄積していくのである。そして、睡眠中に情報の整理を行っている。さらに整理する過程で記憶の反復練習(定着)も行っていることがわかってきているというのである。

以上、睡眠の重要性はおわかりいただけたと思う。どうか質の高い眠りをとるように努め健康で心豊かな生活を送ってほしいと願っている。


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